外部供給と位階

術の上限は「外部から入る供給」と「反作用を時間あたりに支払える量」で決まります。ここでは、その最小モデルを式で固定し、数値例で使い方を示します。

魔法が何でもできてしまう世界は、便利ですが、設計としてはすぐ破綻します。
そこで本サイトでは、派手さより先に上限を固定します。「できる/できない」を気分ではなく、条件と手順で決めるためです。

この章で扱う上限は2つだけです。外部から入る供給(燃料)と、介入に伴って発生する反作用(歪み)。
この2つを計算できる形にしておくと、「なぜ今はできないのか」「どれくらい待てばできるのか」「なぜ急ぐと失敗するのか」を一貫して説明できます。

位階(ランク)は「強さのランキング」ではなく、上限の束です。
供給が太いのか、端末の受け口が広いのか、反作用を速く払えるのか。どこが強いかで、同じ術でも得意不得意が変わります。

このページの結論

同じ術でも、供給が足りない場合と、反作用が支払えない場合があり得ます。
どちらで詰まるかは、(i) 外部供給 Pext [W]、(ii) 端末の受け口、(iii) 反作用率の上限 \(\dot C_{\max}\) [RU/s] で判定できます。

読み順は次の通りです。まず供給が距離でどれだけ減るか(式(1))。次に端末がその供給をどれだけ取り込めるか(式(2))。
そして反作用が「時間あたり」で上限を持つこと(式(3))を置き、最後に最短実行時間(式(4))へまとめます。
以降の章で超光速や過去接続へ進んでも、判断の枠はこの二重上限のままです。

外部供給は遠いほど弱い

まず、外部供給が「どこでも同じ量ある」という前提を捨てます。
この世界の燃料は、空気中に満ちた“魔力”ではなく、外部(光源)から流れ込むリソースです。だから、光源から遠いほど細くなります。
遠征や星間運用が難しい理由を、才能や精神論ではなく、供給の太さとして説明できるようになります。

\[ P_{\mathrm{ext}}(D)=P_0\,D^{-\gamma}. \tag{1} \]

式(1)は、光源距離 D が大きいほど外部供給 Pext が弱まる、という最小の仮定です。
ここでは D を 光源距離の単位(LD)で規格化し、数として扱います(D [LD])。
\(P_0\) は D=1 の基準供給 [W]、\(\gamma\) は減衰の強さ(無次元)です。

べき乗で減る形にしているのは、距離が少し伸びただけで「効き」が目に見えて落ちるからです。
\(\gamma\) を大きくすると近場は豊かで遠方は枯れ、\(\gamma\) を小さくすると遠くまで供給が持ちます。
どちらを採用しても、距離がそのまま地理や政治(拠点の価値、遠征のコスト)に効く世界になります。

ただし \(P_{\mathrm{ext}}\) は、その地点に届いている“総量”です。
術者が手元で使える量は、次の節の端末(受け口)が決めます。川のそばに立っても、コップが小さければ一気飲みはできません。

例:距離で供給がどれくらい減るか

基準として \(P_0=1.0\times10^{15}\,\mathrm{W}\)(1,000 TW)、\(\gamma=2\)(無次元)と置くと、

「強い精霊ほど遠くでも動ける」ように見えるのは、実際には 供給が細くなっても成立する手続きを選んでいる、という描き方ができます。

外部供給の距離減衰(比)
図2-1 式(1)の形(例:γ=2)。縦軸は Pext/P0 [-] の比なので無次元。

図2-1は、「遠い」とは単に距離の話ではなく、燃料が枯れるという意味だ、と直感するための図です。
たとえば \(\gamma=2\) なら、距離 D を2倍にしただけで供給は 1/4。遠征が難しいのは当然になります。
そして次に問題になるのは、その細い供給を「どれだけ掬えるか」です。そこで端末の話へ移ります。

端末が受け取れる供給には上限がある

供給があるだけでは、術は動きません。燃料が川のように流れていても、手元に器がなければ一滴も使えない。
外部と宇宙をつなぐ窓口が必要で、それが端末です。

端末は「精霊の化身」でも「依り代」でも「装置」でも構いません。ここでは形をいったん忘れて、
「どれだけ取り込めるか」という一点に絞り、受け口の太さとして扱います。

\[ P_{\mathrm{in},i}(x,t)\le \kappa_i\,g(x)\,P_{\mathrm{ext}}(x,t). \tag{2} \]

式(2)は、端末 i に実際に入る供給 Pin,i [W] が、外部供給 Pext [W] の全量ではなく、
端末と場所で“絞られた”分だけになる、という意味です。端末の結合 \(\kappa_i\) [-] と、場所の流路 \(g(x)\) [-] が掛け算で効きます。

\(\kappa_i\) は端末側の都合(適合・加工・熟練)です。同じ場所でも端末が違えば、受け口の太さが変わります。
\(g(x)\) は場所側の都合(流路の太さ)です。同じ端末でも場所が悪ければ、通り道が詰まります。
2つを分けておくと、装備・技能の差地形・拠点の差を別々に描写できます。

式が不等号なのは、「上限はあっても、常に上限まで吸えるとは限らない」ためです。
安定を優先して絞る、別の術と取り合う、端末が熱や破損で劣化する――現場では上限未満で運用する理由がいくらでもあります。

まとめると、供給の太さは次の3つの掛け算です。ひとつでも細ければ、そこで止まります。

つまり「才能がある」だけでも「聖地に立つ」だけでも足りず、組み合わせで上限が決まります。
物語としては、「条件を揃える」「拠点を取る」「装備を整える」が、そのまま強さになる世界観です。

例:端末1つで受け取れる上限

\(P_{\mathrm{ext}}=2.5\times10^{14}\,\mathrm{W}\)、\(\kappa_i=0.30\) [-]、\(g=0.40\) [-] なら、

\(P_{\mathrm{in},i}\le 3.0\times10^{13}\,\mathrm{W}\)(30 TW)となります。
つまり「外部供給が大きい=その場で何でもできる」ではなく、端末の受け口がボトルネックになります。

この「受け口のボトルネック」を置くと、「強い=いつでも全力」にはなりません。
光源に近くても流路が細い路地なら小技しか出ず、辺境でも端末を磨き拠点を整備すれば、安定して力を引き出せる。
位階は才能だけでなく、装備とインフラでも伸びます。ここに「魔法が技術として発達する余地」が生まれます。

ここまでが「燃料側」の上限でした。次は、燃料があっても動かない理由――反作用の上限です。

反作用は“実行中に”支払う。上限を超える術は立ち上がらない

供給は燃料でした。燃料が細いなら「待てばいい」こともあります。
では燃料が十分なら万能か? そうはなりません。外部からの介入は、世界に“ひずみ”を残すからです。

ここでは、そのひずみを反作用 C [RU] と呼び、負荷として数えます。RU はエネルギーではなく、「どれだけ無理をしたか」の単位です。
そして反作用は“後払い”ではありません。実行中に発生し、支払い速度には上限がある。超えた瞬間に術は立ち上がらない――この性質が重要です。

\[ \dot C(t)\le \dot C_{\max}. \tag{3} \]

式(3)は、そのレート制限を不等号で書いただけです。反作用率 \(\dot C\) [RU/s] が上限 \(\dot C_{\max}\) [RU/s] を超える手続きは不成立。
「後で払うから今は無茶する」はできません。帯域を超えた回線が切れるように、上限超えの術は最初から立ち上がらない、という扱いにします。

この制約を置くと、物語で次のような差が作れます。

供給(W)の不足は「遅い」問題になりやすい一方、反作用率(RU/s)の不足は「起動できない」問題になります。
確率偏向・超光速・過去接続のような“条件をねじる”術が、便利すぎず危険で高価に見えるのは、このためです。

最短実行時間は、遅い方で決まる

燃料と歪み。どちらも帳尻が合って、はじめて術は立ち上がります。
では現場で一番知りたいのは何か。「最短で何秒かかる?」です。ここではそれを一発で出します。

\[ \Delta t \ge \max\!\left(\frac{E}{P_{\max}},\,\frac{C}{\dot C_{\max}}\right). \tag{4} \]

式(4)は、「必要量 ÷ 速度=時間」という当たり前を2本並べて、長い方を採用するだけです。
必要エネルギー E [J] を入れ切る時間が \(E/P_{\max}\) [s]、必要反作用 C [RU] を支払う時間が \(C/\dot C_{\max}\) [s]。遅い方が足を引っ張ります。

速くしたいなら、まずどちらが遅いかを見る。対策はその“遅い方”にだけ効きます。

この式が便利なのは、同じ術でも「遅い理由」を選べる点です。
燃料が細いのか、歪みの支払いが遅いのか――得意不得意が、自然にキャラクターの輪郭になります。

例:最短実行時間の計算(単位つき)

このとき、エネルギー側の時間は \(E/P_{\max}=10\,\mathrm{s}\)、反作用側は \(C/\dot C_{\max}=15\,\mathrm{s}\)。
よって \(\Delta t\ge 15\,\mathrm{s}\)。

最短実行時間の例(バー)
図2-2 式(4)の直感図。長い方のバーが最短時間を決める(この例では15 s)。

図2-2は、二つの砂時計のうち「長い方が終わるまで待つ」だけ、という絵です。
供給が支配している術に反作用だけ強化しても速くならず、反作用が支配している術に端末だけ足しても速くならない。
“効く強化/効かない強化” が決まるので、戦闘でも政治でも駆け引きが作りやすくなります。

成立域:供給と反作用の“両方”で足切りされる

術は、供給と反作用という二枚の壁に挟まれています。どちらで先に当たるかが、その術者の限界の「顔」になります。
そして厄介なのは、片方だけ強くしても片方が残ることです。だから位階差(上限の差)が、はっきり“形”として出ます。

ある時間 \(\Delta t\) の中でできることは、箱になります。
「その時間内に入れられるエネルギー」と「その時間内に払える反作用」にそれぞれ上限が付き、箱の外へ一歩でも出た瞬間に不成立です。

成立域(EとC)
図2-3 成立域の例。横は必要エネルギー E [kJ]、縦は必要反作用 C [RU]。長方形の内側だけが成立する。

図2-3の長方形は、供給上限が横方向(E の上限)を、反作用率上限が縦方向(C の上限)を作る、という意味です。
箱を広げる方法は3つしかありません。(i) 端末や場所で Pmax を上げる、(ii) 位階や補助で \(\dot C_{\max}\) を上げる、(iii) 時間 \(\Delta t\) を長く取る。
逆に言えば、場面の緊張感は「時間を取れない」だけで簡単に作れます。箱が縮むからです。

位階(ランク)の扱い方(最小)

このサイトでは位階を「強さの一つの数」には潰しません。
実務上は、少なくとも (i) 端末の受け口 \(\kappa\) [-]、(ii) 反作用率上限 \(\dot C_{\max}\) [RU/s]、(iii) 同時に扱える端末数、の組として持つ方が破綻しにくいからです。

たとえば「大火力は出せるが複数端末は扱えない」「繊細な改変は得意だが燃料が細い」など、上限の偏りを残すと人物が立ちます。
位階を単一スコアにするとこの偏りが消え、“強い=万能”へ寄ってしまいます。

供給で詰まる術/反作用で詰まる術

式(4)の \(\max(\cdot,\cdot)\) は、術の“遅さの原因”が二種類あることを示しています。
燃料が足りないのか(供給ボトルネック)、歪みが払えないのか(反作用ボトルネック)。見た目が同じでも中身が違います。

供給ボトルネックの術は、出力がエネルギーとして見えやすい(熱、光、推進、構築)。
反作用ボトルネックの術は、見た目は静かでも条件をねじる(確率、同期、因果、過去)。
どちらの系統かで、必要な準備、失敗の仕方、そして「強い人」の像が変わります。

供給ボトルネック
E が大きい / Pmax が小さい
\(\Delta t \approx E/P_{\max}\)
例:加熱、溶解、推進、構築
反作用ボトルネック
C が大きい / \(\dot C_{\max}\) が小さい
\(\Delta t \approx C/\dot C_{\max}\)
例:確率偏向、遠距離同期、過去接続

同じ「強い術」でも、詰まり方が違う。描写では、遅い理由をどちらに置くかで雰囲気が変わる。

図2-4 供給ボトルネックと反作用ボトルネック。式(4)のどちらが効いているかで、術の性格が変わる。

図2-4は、術そのものを分類するためというより、描写に「手触り」を与えるための道具です。
同じ“爆発”でも、燃料型なら供給と準備が前に出て、ねじり型なら反作用とリスクが前に出ます。
どちらを選ぶかで、戦い方も政治も変わります。

複数端末で供給上限を足す(ただし同期コストが出る)

供給が足りないとき、真っ先に思いつくのは「受け口を増やす」ことです。
端末が一本の細いストローなら、二本、三本と増やして同時に吸う。発想は単純です。

\[ P_{\max} \equiv \sum_i P_{\mathrm{in},i} \le P_{\mathrm{ext}}\,\sum_i \kappa_i g_i. \tag{2a} \]

式(2a)は、端末を複数用いるときの供給上限の足し合わせです。
ここで \(g_i\) は端末 i が置かれた場所 \(x_i\) の流路 \(g(x_i)\) [-] を表します。端末を増やせば、受け口の総断面積 を稼げます。

この式の読み方は「足し算できるところは足す。ただし、足し算の前にそれぞれの端末が場所と品質で絞られる」です。
端末を増やす文明は、自然に「端末を置くのに良い場所(g が大きい場所)」を探し、そこを拠点化していきます。

「供給側の強化」は、反作用側の壁で止まることがある

端末を増やすほど、意図の同期(第4章の式(7))が重くなり、反作用率の上限 \(\dot C_{\max}\) [RU/s] で止まります。
つまり「供給側の壁」を越えようとして「反作用側の壁」にぶつかることがあります。

しかし、ここで反作用が牙をむきます。端末を増やすほど、同じ意図で揃えて動かすための同期が重くなります。
つまり「供給を太くする」ほど「歪みの支払い」が増えます。文明が発達するほど、補助網や規格、戦術が発達する――という線が引けます。

例:端末を増やして効く場合/効かない場合

同じ E と C でも、どちらがボトルネックかで「端末追加の効き方」が変わります。

ケース条件(例)Δt(1端末)Δt(2端末)
供給が支配 E=500 kJ, C=30 RU, Pmax=50 kW/端末, \(\dot C_{\max}=20\,\mathrm{RU/s}\) \(\max(10\,\mathrm{s},\,1.5\,\mathrm{s})=10\,\mathrm{s}\) \(\max(5\,\mathrm{s},\,1.5\,\mathrm{s})=5\,\mathrm{s}\)
反作用が支配 E=500 kJ, C=30 RU, Pmax=50 kW/端末, \(\dot C_{\max}=2\,\mathrm{RU/s}\) \(\max(10\,\mathrm{s},\,15\,\mathrm{s})=15\,\mathrm{s}\) \(\max(5\,\mathrm{s},\,15\,\mathrm{s})=15\,\mathrm{s}\)

「端末を足せば速くなる」とは限らず、反作用が支配している術は、端末を増やしても速くなりません。

準備で「パワー不足」はある程度ごまかせる

供給は W、つまり「一秒あたりどれだけ入るか」です。
その場の瞬発力が細いなら、時間を味方につけてエネルギー(J)として貯めればいい。ここから“準備”が生まれます。

\[ T_{\mathrm{prep}} \ge \frac{E_{\mathrm{store}}}{P_{\max}}. \tag{4a} \]

式(4a)は当たり前ですが強力です。Pmax [W] でしか入らないなら、Estore [J] を貯めるのに最低でも Estore/Pmax [s] かかる。
つまり「準備時間」は、世界の物理として固定できる制約になります。派手さを出すなら、瞬発力より準備で稼ぐ方が扱いやすいです。

ここでの「貯める」は、魔法の中に“無限の蓄電池”がある、という意味ではありません。
熱なら蓄熱材、圧力ならタンク、位置エネルギーなら巻き上げ、化学なら燃料――通常物理の貯蔵に落とし込める形にしておくと矛盾が少ないです。
そして「容器」や「放出の手段」もまた、世界の技術として描写できます。

準備でごまかせないもの
例:城門の溶断は「準備で成立」させる

城門の金具を溶かすには、術者が戦闘中に出せるパワーでは足りない、とします。
そこで、数時間かけて熱(蓄熱材)に E を貯め、最後に短時間で放つ。
このとき物語上の制約は「準備時間」として表に出ます(奇襲される、監視される、途中で妨害される、など)。

準備時間があるということは、術が戦闘だけでなく、工作や兵站にもなるということです。
遠距離から安全に貯めるのか、潜入して短時間で貯めるのか、準備を偽装するのか。時間が味方である限り、戦術の選択肢は増えます。

見積もりテンプレ:E と C を置いて判定する

術を設計するときに迷ったら、まず E と C に分けて書きます。燃料として何J要るか。歪みとして何RU要るか。
あとは上限(Pmax と \(\dot C_{\max}\))を置いて、式(4)で「最短何秒」を出すだけです。これが、魔法が技術になる瞬間です。

この章では、反作用 C [RU] の中身をまだ細かく定義していません。後の章で、確率偏向や層同期など、手続きごとに C の見積もり方を増やします。
ただ、正確な C がなくても、反作用率の上限 \(\dot C_{\max}\) があるだけで「やろうとしても立ち上がらない術」を作れます。便利さが暴走しないための、最初の歯止めです。

判定手順(最小)
  1. 場所の条件から \(P_{\mathrm{ext}}(D)\)(式(1))と \(g(x)\) を置く。
  2. 使う端末の \(\kappa_i\) を置き、\(P_{\max}\) を出す(式(2)、複数なら式(2a))。
  3. 目的の効果から、必要エネルギー E [J] を見積もる(下の表)。
  4. その手続きの反作用 C [RU] と、反作用率上限 \(\dot C_{\max}\) [RU/s] を置く。
  5. \(\Delta t\ge\max(E/P_{\max},\,C/\dot C_{\max})\)(式(4))で最短時間を出す。
  6. 時間が長すぎるなら、(a) 端末を増やす、(b) 術式を変えて E か C を下げる、(c) 準備へ回す。

E(必要エネルギー)の雑な目安(物理の見積もりを使う)

E は普通の物理のエネルギーです。熱なら比熱、運動なら \(\frac12mv^2\)、高さなら \(mgh\)。
魔法だからといってここを曖昧にすると、途端に「無限に便利」になりやすいので、ざっくりでも置いておくと破綻しにくいです。

目安として、1 kW は 1 kJ/s です。
たとえば 50 kW なら 1秒で 50 kJ、10秒で 500 kJ を入れられます。表の数字が「何秒くらいの仕事か」を、すぐ供給上限に結びつけられます。

効果E の目安メモ
水 1 L を 20→100°C に加熱約 336 kJ比熱 4.2 kJ/(kg*K) として
水 1 L を沸騰させて蒸発(0→100°C + 気化)約 2.6 MJ潜熱が支配する(派手さの割に高い)
100 kg を 10 m 持ち上げる約 9.8 kJmgh
1 kg を 100 m/s まで加速5 kJ\(\frac12mv^2\)
小部屋(30 m3)の空気を 10°C 上げる約 360 kJ密度 1.2 kg/m3、比熱 1.0 kJ/(kg*K)

数字を見ると、気化(蒸発)のように「相変化」が絡むと、必要エネルギーが一気に跳ねることが分かります。
たとえば 50 kW の供給なら、水1 L の蒸発(約 2.6 MJ)は 50秒以上かかります。
「一瞬で霧を出す」「一瞬で蒸気爆発」などを簡単にしすぎないために、こういう見積もりが効いてきます。

例:同じ「解錠」でも、E と C の置き方で別物になる

鍵を開けたい、という目的は同じでも、手続きが違えば E と C は別物になります。

前者は「普通の物理で起こりうる変形」を、外部供給で早回ししているだけなので、反作用は軽くできます。
後者は「本来なら起きない並び替え」を、条件をねじって成立させるので、反作用が重くなりやすい、という描き分けです。

こうしておくと、「なぜこの術者は鍵開けが得意/不得意なのか」を、位階(上限)の差として描写できます。

第2章のまとめ(運用で覚える形)

次章「絡み網と距離」では、端末どうしの相関から距離を定義します。
ここで出てきた「供給の細さ」や「同期の難しさ」が、遠距離でどう効いてくるかを、同じ枠でつなげます。